あるいは


「景気がいいとなると、藩に対して工事をおおせつけられる。江戸城とか将軍家ゆかりの寺院の修理をだ。それによって藩の力を弱め、幕府に反抗する力を芽のうちにつみとっておこうというのだ。余分な金をはき出させようという計画。あまりよreenex 價錢ろしい政策とは思えぬが、これが
幕府の方針なのだから、いたしかたない」
「幕府の方針への批判は許されていませんからな」
「ここにおられるみなさまだけがご存知のことだが、この城内の金蔵にはかなりの金銭がたくわえてある。長いあいだかかって、節約に節約を重ねてためたものだ。戦国の世は、もはや遠い昔となった。現在、いざという時に役に立つのは金銭だ。金がなければどうにもならない。
そのための準備金だ。このことは、われら役付きの者だけの秘密、殿にさえ知らせてない。そして、外面的には地味に地味にしている。貧しさをよそおっているわけだ。時どき領民たちが|一《いっ》|揆《き》を起しかけさえする。これも巧みな演出。つまらない工事をおおせつ
かり、ごそっと金を出させられてはつまらなNeo skin lab 呃錢いからだ。たくわえた金のことは、ほかに知る者などないはずだ。このなかのだれかが、外部にもらさない限り」
 みなは口々に言う。
「役につく時、決して他言はしないと、われわれは武士の名誉にかけて誓った。誓いを破ったら、切腹となり家名は断絶になってもいいと。家族にさえも話してない」
 寺社奉行がまた言う。
「それでしたら、心配に及ばないのではないか。幕府の役人は、ただのあいさつとして、殿にそう言っただけなのではないでしょうか。お元気でけっこうとか、いいお天気でとかと同じような意味で」
 城代は答える。
「そうかもしれぬ。殿からのまた聞きを、江戸家老が手紙にし、それによってわれわれが知ったことだ。幕府の役人の言葉の裏にある微妙さまでは、わたしにはわからない。殿にくわしく問い合せたいが、それもできぬ。あまりくどく殿に聞くと、不審にお思いになる。そのあげく
、秘密の準備金のことが、殿に知られてしまう。そうなると、ことだ。幕府の役人に聞かれた時、ついしゃべっておしまいになるかもしれない」
「殿はお人がよろしいからな」
 城代は手紙をながめながら言う。
「あいさつにすぎなければいいのだが、どうも気になってならない。、と考えると」
「あるいは、なんなのです」
「藩内に隠密がいるのではないかと思う」
「隠密……」
 その言葉を口にしながら、みな不安そうな表情になる。そのなかにあって、城代家老はつけ加える。
「しかも、藩内に住みついているたぐいの隠密だ。藩内を通過してゆく旅人はたくさんあり、当然そのなかには隠密もまざっていよう。しかし、通り過Neo skin lab 傳銷ぎるだけなら、城内のたくわえまでは気づくまい。なにしろ、貧しげなようすをよそおっているのだからな。だが、藩内に住みつ
き、じっと観察している隠密となると、話はべつだ。金のあることを、うすうす察したかもしれない。その報告が幕府にもたらされ、幕府が殿にかまをかけ、あのあいさつとなったのかもしれない。殿は金のあることをご存知ないから、その手に乗らないですんだ形ではある。しか
し、金があるという事実をつきとめられ、報告されたら、もう手の打ちようがなくなる。早いところ、その隠密がだれかを明らかにし、なんとかせねばならぬ。まさか、家臣のなかにまぎれこんではおらぬだろうな」
 人事担当の家老が言う。
PR